導入
物流業務に関わり始めた方から、または新たに管理する立場になった方から、よく聞く声があります。
「毎日の業務は回っているのに、物流全体を説明しようとすると、うまく言葉にできない。」
本稿では、その背景にある構造的な理由を整理しながら、物流を捉える際の一つの補助線として、
「調達物流・社内物流・販売物流」という三つの視点
を提示します。
物流は、最初から「分業された構造」で存在している
物流という言葉は一つですが、実務においては、最初から明確に分業されています。
典型的には、次の三つです。
- 調達物流
- 社内物流
- 販売物流
それぞれは連続した流れでありながら、担当部門も、関与する人も、評価される指標も異なります。
この分業構造そのものが、物流全体を見えにくくしている最初の要因と言えます。
調達物流は「外から入ってくる流れ」
調達物流は、原材料や部品、商品などが自社の外部から内部へと入ってくる流れです。
この領域では、
- 取引先との関係
- 納期の確実性
- 輸送条件や通関
- 海外拠点との連携
といった点が強く意識されます。
担当者にとっては「安定して入ってくること」が最大の関心事であり、その先の工程は、意識の外に置かれがちです。
社内物流は「見えにくく、属人化しやすい領域」
社内物流は、
- 倉庫内作業
- 工場や拠点間の移動
- 在庫管理
など、自社内部で完結しているように見える領域です。
このため、
- 当たり前として扱われやすい
- 改善の余地が見えにくい
- 特定の人の経験に依存しやすい
という特徴があります。
実務が回っているほど、全体構造を言語化する機会は少なくなりがちです。
なお、こうした社内の物流構造は、企業の外側とも連続しています。その関係は以下の記事で整理しています。(3.販売物流は、なぜ他社の調達物流になるのか – 物流は「企業間」で連続している)
販売物流は「顧客視点が強く表れる領域」
販売物流は、製品や商品を顧客に届ける流れです。
この領域では、
- リードタイム
- 納品条件
- トラブル対応
など、顧客から直接評価される要素が前面に出ます。
このため、「予定どおり届けること」や「トラブルを起こさないこと」が何よりも優先されやすくなります。
その結果、調達側や社内側でどのような制約や判断があったのかまで立ち戻って考える余裕がなくなり、物流全体のつながりが意識されにくくなります。
三つの物流は「別物」ではなく「連続している」
重要なのは、これら三つの物流が本来は切り離されたものではないという点です。
ある企業の販売物流は、次の企業にとっての調達物流になります。
つまり、物流は、
- 企業内では分断され
- 企業間では連続している
という、非常に多層的な構造を持っています。
この構造を意識せずにいると、「自分の担当範囲」以外が急に遠い世界に感じられるようになります。
全体像が見えにくいのは「能力」ではなく「構造」
ここまで見てきたように、物流全体が見えにくい原因は、個人の理解力や経験不足ではありません。
- 分業され
- 評価軸が異なり
- 立場ごとに関心が分断されている
この構造そのものが、見えにくさを生んでいます。
だからこそ、全体像を捉えるには「知識を増やす」よりも「構造として整理する」方が有効な場合があります。
なお、この構造を踏まえると、「どこまでが自社の仕事なのか」という問いも自然に浮かび上がってきます。(4.物流はどこまでが「自社の仕事」なのか – 委託・外注・3PLの境界線を考える)
結び
物流を考える際に、調達・社内・販売という三つの視点を持つことは、全体像を捉えるための一つの入口に過ぎません。
しかし、
- どこを見ていて
- どこを見ていないのか
を意識するだけでも、業務の見え方は大きく変わります。
次回は、この構造をさらに一段掘り下げ、企業間で物流がどのようにつながっているのかについて整理してみたいと思います。
※ 本稿は、物流・ロジスティクス業務における理解や判断の前提を整理することを目的とした論考です。個別の正解や手法を示すものではありませんが、日々の業務や対話の中で、立ち止まって考える際の補助線としてお役立ていただければ幸いです。