導入
物流について考えるとき、私たちは無意識のうちに「自社の中で完結する仕事」として捉えがちです。
しかし実際には、ある企業の物流は、別の企業にとっての物流の一部として連続的につながっています。
本稿では、販売物流と調達物流の関係を手がかりに、物流がどのように企業間で連なっているのかを整理します。
物流は、企業の境界で分断されて見える
社内で物流業務を見ていると、
- 自社の倉庫
- 自社の輸送
- 自社のルール
といった枠組みで考えることがほとんどです。
そのため、物流は「自社の管理範囲の中にある仕事」として認識されやすくなります。
しかし、この見方は企業の境界で視野を切っているとも言えます。
ある会社の「販売物流」は、次の会社の「調達物流」
例えば、
- A社が製品を出荷する
- B社がその製品を受け取る
この一連の流れは、
- A社にとっては「販売物流」
- B社にとっては「調達物流」
です。
同じ物の移動であっても、立場が変わるだけで物流の名称も、管理観点も変わります。
立場が変われば、関心事も変わる
販売物流では、
- 納期を守れるか
- クレームを出さないか
- 顧客にどう見えるか
が強く意識されます。
一方で調達物流では、
- 安定して入ってくるか
- 欠品しないか
- コストや条件は妥当か
といった点が重視されます。
同じ物流であっても、見ている方向が異なるため、課題の捉え方も自然に変わっていきます。
企業間物流は「連続しているが、共有されていない」
物流は、物理的には企業間で連続しています。
しかし、
- 判断基準
- 評価指標
- 情報の見え方
は、各企業・各部門ごとに分断されています。
その結果、
- 前工程で何が起きているのか
- 次の工程にどんな影響を与えているのか
が、十分に共有されないまま業務が進んでしまうことも少なくありません。
自社視点だけでは、全体は説明できない
物流全体を説明しようとすると、自社の業務だけを丁寧に語っても、どうしても説明が足りなくなります。
それは、物流という仕組みそのものが、複数の企業の視点をまたいで成り立っているからです。
自社にとって自然な判断が、別の企業から見ると別の意味を持つこともあります。
企業間でつながる視点を持つということ
物流を「企業間でつながっているもの」として捉えると、
- 自社の制約がどこから来ているのか
- 自社の判断がどこへ影響しているのか
を、少し広い範囲で考えられるようになります。
これは、
- 正解を見つけるため
- 責任の所在を明確にするため
というよりも、全体像を説明できるようになるための視点です。
結び
物流は、
- 社内では分業され
- 企業間では連続している
という特徴を持っています。
販売物流と調達物流の関係を意識することは、この構造を理解するための一つの入口です。
物流を「自社の仕事」としてだけでなく、「企業間で連なる仕組み」として捉えることで、業務や判断の背景がこれまでとは違って見えてくるかもしれません。
そして、企業間で連続する物流を考えると、委託や外注をどう位置づけるかという論点も避けて通れなくなると思います。(4.物流はどこまでが「自社の仕事」なのか – 委託・外注・3PLの境界線を考える)
※ 本稿は、物流・ロジスティクス業務における理解や判断の前提を整理することを目的とした論考です。個別の正解や手法を示すものではありませんが、日々の業務や対話の中で、立ち止まって考える際の補助線としてお役立ていただければ幸いです。